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兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

気流留め

さて、今回のプチ知識シリーズも
今回で一旦最終回とさせていただきます。
又時々5回くらいに分けて
更新させていただこうと思いますので、
是非ご覧になっていただけましたら
幸いでございます。

最終回は「気流留め」についてのお話です。
「気流留め」はあまり聞きなれない
言葉かと思います。

しかしジェット気流と言う言葉は
聞かれたことがある方は多く
いらっしゃると思います。

気流とは空気の流れのことですが、
実は住宅においても空気の流れる場所が
皆さんの知らない所で発生しています。

どのような場所かと言うと壁の中が
そうなんですが現在、日本に建っている
殆どの住宅では根太床と言う工法で
床が構成されているのですが
根太床の場合、床下と壁の中や天井裏が
空間で繋がってしまいます。

そうなると床下や天井裏で冷やされた空気が
壁の中を伝って自由に動き回り、
結果として壁を冷やし、強いては部屋を
冷やしてしまい暖房の効率が低下してしまいます。

剛床(ごうしょう)と呼ぶ厚板を土台や大引に
直接打ち付ける工法では、
床下と壁が空間で繋がることはないため、
壁の中に気流が起こることはありません。

このため断熱リフォームをするなら
気流留めを施さないと、いくら一生懸命に
断熱材を入れた所で効果は僅かしか向上しません。

以前に紹介させていただいた
建築知識ビルダーズ52号の中に、
室蘭工業大学名誉教授の鎌田先生の記事があり、
床、壁、天井にグラスウール10Kが50㎜厚が
施工され窓ガラスはシングルガラスのアルミ枠の家、
東京都練馬区で平均18℃で全室暖房した場合の
灯油消費量を基準にした時に、
同スペックの家に気流留めを施した場合の
灯油消費量が41%削減出来、

同じく床、壁、天井の断熱材の厚みを
倍の100㎜にした場合では、わずか16%しか
削減できないとシミュレーションされています。

それほど気流留めの効果は高いと言えますが、
実はこれプロであって知らない人が
意外に多いんです。

プロであっても殆どの方が窓の性能を上げて
断熱材をしっかり入れさえすれば、
大丈夫と勘違いされていると思います。
特にDIYで家を触ろうとする場合は、
全くこのような点には
配慮されていないのではないでしょうか?


このような根太床組の場合、
床下と壁の中が空間で繋がるため
床下で冷やされた空気が壁の中を
自由に動き回ります。

外周壁は断熱材を入れたとしても
部屋と部屋の間にある間仕切壁には
断熱材も何もありません。
スイッチやコンセントの周りに
手を当てて冷たい空気が流れていないか、
ご確認していただくとお分かりいただけると思います。

この写真は手前が工事のため新しく床や壁を
作るので床下地の合板を貼っていますが、
写真の丁度真中に写真の向こう側の部屋の
床を受ける根太が写っています。

真っ黒に写っている部分が床下空間で、
白く写っているのは写真向う側の部屋の
壁の裏面です。
このまま壁を貼ってしまうと
床下と壁の中の空間が繋がってしまうため
気流が発生します。

この気流を留める材料のことを「気流留め」
と呼ぶのですが、方法は様々あり、
乾燥木材による方法や断熱材で
気流を留める方法などがあります。

先の鎌田先生のシミュレーションにも
ありますように、住まいの省エネ性能を
高めるためには地味ですが
忘れてはならない部位になります。

格好良いだけの家は沢山ありますが、
見えない部分にもちょっとした
配慮があるだけで、
格好良くて尚且つ省エネ性も高い家になります。