針葉樹の家具 その2
さて、前回針葉樹が家具に用いられることが
少ないとお伝えしましたが、
かなり厳密に言うと、椅子に用いられることが
少ないと言えば伝わりやすいのかもしれません。
何故でしょうか?
その前に「針葉樹」と「広葉樹」の違いを
説明しておくべきですね。
既にご存知の方も多いと思いますが、
針葉樹とは書いて字の如く葉の形が針のように
細長い形をしていて杉や桧が、
その代表的な樹種になります。
比較的早く成長し樹齢50年ほどもすれば
家などの構造材として利用できるほどに育ちます。
それに対して「広葉樹」は葉の形が大きく
樹木の生長にもかなり時間を要します。
この成長の違いが利用適正に影響するのですが、
その話は後ほどさせていただきます。
椅子に用いる木材は幾つかのパーツに分かれていて、
それを組み合わせることで出来上がります。
材と材を組み合わせる部分を仕口(しぐち)と
言いますが、先ず問題となるのが仕口の強度です。
仕口に強度が無ければ家具として成立しません。
針葉樹の場合、材料の断面が
ある程度大きく確保されていないと
仕口の強度を発揮し難い特性があります。
しかし、椅子のパーツでは仕口断面が
とても小さくなるため、
そのデザインによっては仕口強度を発揮出来ずに
椅子としての用を成さないことも考えられることが
採用し難いのだと思います。
木材の重さを現わす用語に「比重」
と言う言葉があります。
比重とは書いて字の如く、重さを比べたものですが、
何と比べているかと言うと「水」です。
同じ容積の水を1とした場合に、
その木材がどの程度の重さを持つかで表すのですが、
針葉樹の桧で0.41程度、広葉樹のナラで0.67、
ウォルナットで0.62程度と、
針葉樹に比べて広葉樹の比重は少し大きく、
重さがあることがこの数値からも分かります。
実際に樹種のサンプルを手に持った時も、
桧だけが他のサンプルに比べて明らかに軽かったのです。
先ほど針葉樹と広葉樹の成長速度の
違いについて述べましたが、
この成長速度の違いが比重にも現れます。
早く成長すると言う事は、それだけ中身が密でない
と言うことになります。
同じ針葉樹であっても南国で成長する杉と
寒い地域で成長する杉を比較すると
年輪と年輪の間隔に差があります。
南で育つ杉は比較的早くに成長するため
年輪と年輪の間隔が大きい傾向があり、
寒い地域で成長する杉はその逆で
年輪と年輪の間隔が密でぎゅっと詰まった
木材が多い傾向にあります。
広葉樹ならば、このぎゅっと詰まった感が
更に密であり木の硬さにも関係します。
従って硬い広葉樹の方がより精密な仕事を
要求される家具、特にデザイン的に凝った椅子には
向いているとされます。
勿論、針葉樹にも針葉樹が適した用い方があります。
要するに適材適所と言うことですね。