兵庫、京都、大阪で誠実に、丁寧に木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所

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兵庫県丹波市を拠点に誠実に、これからの木の住まいづくりに向き合う芦田成人建築設計事務所 芦田成人のブログです。

伝統的継手の強度(追掛大栓継)

在来(軸組み)工法は実に自由度が高い工法と言われていて、日本の住まいは代々、この工法によって建てられてきました。

最近では2×4工法や金物による工法も進歩していて、選択肢が増えていますが、私共では専ら、在来軸組み工法オンリーです。

そして、その在来軸組み工法の特徴である仕口(しぐち)や継手(つぎて)の種類も沢山あり、地域や職人さんによってちょっとずつ違っていたりします。

しかし、最近ではその仕事もプレカットと言う機械による加工が多くを占めるようになり、人の手によって刻まれる現場も減っていると言わざるを得ない状態です。

しかし、やはり木を見せて使いたい時には、その継手や仕口の仕事にもこだわりや美しさを求めたくなる場合もあり、たまにプレカットでは対応し辛い仕事を要求する事があります。

そのような仕事の1つに「追掛大栓継ぎ(おっかけだいせんつぎ)」と言う継ぎ手があります。

追掛大栓1

材料の幅の半分側が加工されています。追掛大栓2

そこに、もう片側の材料を持ってきて、上から滑り込ませるように下ろして行きます。
追掛大栓3

そしてある程度まで下ろしていくと材料同士がかみ合って少しきつくなり始めますので、掛け矢(木のハンマー)で少しづつ並行を保ちながら叩いて行きます。
追掛大栓4

あと、もう少しで完全に組めそうです。
追掛大栓5

組めたので栓を打って、二つの材を完全に組んでからレッカーで吊るし上げて所定の位置へ運びます。

追掛大栓6

この写真は上5枚とは別の現場ですが、下からその姿を見上げたものです。材料同士が握手しているようですね。

「これがきっちりと組めるかどうかは大工の腕の見せ所」と言う話を聞いた事もあります。

かなり昔の話しになりますが、実は私の事務所には、私自身が真似事でこれを刻んで組もうとして途中できつくなり過ぎて、組めなかったモックアップがあります。トホホ・・・

ちなみにこの継手は数ある継ぎ手の中ではもっとも強度のある継ぎ手と思いますが、あるデータによりますと

短期許容引張耐力(引張強度)は7.2KNあるとの事ですが、それがどの程度の数字なのかは又今後のエントリーで比較してみます。

ちなみに強度を考える場合、長期と短期と言う2種類の強度について検討する必要があるのですが

長期とは材料自体の自重や建物に入る荷物などによってずっと長期に渡って掛かり続ける荷重によるもの

短期とは地震や台風などによって一時的に強く作用する荷重によるものと言う事で

先の実験データは後者の短期時における荷重を想定して材料を引っ張り合って出た数字です。