古民家であって古民家でない
今回の見学会には「古民家」と言うキーワードを聞きつけ、お見えになられた方もいらっしゃいました。 古民家と言うと大きな黒い梁が存在感を示す重厚感をイメージされて、お見えになられた方には今回の建物では少し違ったイメージを持たれたことと思います。
もっとも、そのような存在感のある梁や歴史を感じる建具などが存在していたなら、それを生かす設計にしていたはずですが、今回はそうではありませんでした。
そうではない、と言うのは今回我々が住まいの歴史をリセットする以前、恐らく数十年前と思いますが、既に大きくリセットされた痕跡が随所に見られました。それが悪いと言うことではありませんよ。
先ず、大きな空間であるリビングダイニングとなった以前の和室続き間は竿縁天井を持つ線の細い材料で内装が施されていました。元のままなら、こんなに断面の小さい材料ではなかったと思います。又廊下を挟んだ、その北側には明らかに経年の違う構造材で部屋が間仕切られていました。中廊下が存在する間取り自体も後の時代であることの証拠でしょう。元のままなら廊下を設けずに田の字型のはずです。
そして何よりも決定的となったのは、既にコンクリートの基礎が打たれていたと言うことです。当時のままの状態であるなら石の上に柱を置いただけの、俗に言う、石場建てと言う工法であるはずですので、一度建物を持ち上げてコンクリートの基礎が打たれたものと思われ、それと同時に増築や内装のやり替えも行われた、即ち今回の工事で大きなリセットが行われたのは少なくとも2度目と言うことになると思います。
ですので、側は古民家であるけども中身は古民家でなく、ほぼ新築に近い状態と言うのが「古民家であって古民家でない」と例えたことの答えになります。
写真は最初の物が和室の続き間、現代風の細い断面の材料で内装が施されています。 そして2枚目は解体時に出てきた、コンクリート基礎。今回の工事で打ったのではなく、既に打たれていたものです。 又写真の状態では、この部屋の構造体の梁を抜いたり足したりしていません。