暮らしは体感、設計は検証
前回のブログでも触れていましたが、
1月末に宝塚のお客様の住まいに温熱測定の機器を据えさせていただきました。
玄関に入った瞬間の空気が、外の冷たさときれいに切り替わる、
冬の家は、その差がよく分かります。
温熱測定は、小さなセンサーを置いていく、ただそれだけの作業です。
けれど私にとっては、「この家で始まった暮らし」を、設計者としてそっと見守るような時間でもあります。
住まいの快適さは、数字だけでは決まりません。
同じ室温でも、人によって「ちょうどいい」は違います。
家族構成、在宅時間、服装、体調。日当たりの感じ方や、風の通り道の好み。
さらに言えば、忙しい朝と、ゆっくりできる夜では、同じ空気でも印象が変わる。
暮らしには“気分”も混ざります。
だから私は、住まいを数値だけで判断することには慎重です。
でも同時に、数値を取っておくことも大切だと考えています。
理由は単純で、体感を大事にしたいからこそ、裏付けを持っておきたいからです。
たとえば「冬の朝、足元が少し冷える」と感じたとき。
それが外気の影響なのか、日射の入り方なのか、換気のタイミングなのか、あるいは暖房の運転の仕方なのか。体感は正直で、だから尊い。けれど、原因の見立ては案外むずかしいものです。
温熱測定は、室温や湿度などを一定期間“実測”し、住まいの温熱環境を数値として把握するものです。
データがあると、暮らしの言葉が少しだけ整理されます。
・暖房の効き始め方に偏りがないか
・湿度が落ちやすい日があるなら、何がきっかけなのか
こうしたことが見えると、「暮らしの改善」が根性論になりません。
暮らし方の工夫で整う部分もあれば、設計として次に活かすべき学びも出てきます。
そして何より測定をする意味は、このお客様の住まいだけのためではありません。
宝塚という地域性、日当たり、風、生活のリズム。
そうした条件の中で、この家がどんな環境になっているのか。
その実測データは、これから設計させていただく住まいにとっても、確かな参考になります。
家づくりは、完成したら終わりではなく、暮らしが始まってからが本番です。
数字は、その本番を「暮らしの言葉」で語るための補助線のようなもの。
言った者勝ちにしないためにも、住まいを数値だけで判断しないためにも、数値もきちんと持っておく。
そんな姿勢で、今回の測定結果も丁寧に読み取り、次の設計へとつないでいきます。
「性能の話ばかり」でもなく、「感覚だけ」でもなく
どちらも丁寧に扱いながら、暮らしに合う判断軸を一緒に整えます。
初回相談で、温熱・換気・日射の考え方も含めてお話しできます。
暮らしを主役に。建築は静かに支える——そのための検証です。