リノベーションについて その20
しばらく続けてきました、「リノベーション
について」シリーズですが、一旦これまでの
内容をまとめて、締めにしようと思います。
又、時期を見て「その21」から再開するか
もしれませんが、その時には宜しくお願い致
します。
まとめ
1.建築確認申請が必要になることがある
壁、柱、床、はり、屋根又は階段の1か所で
も過半に及ぶ工事がされる場合は確実に建築
確認申請の提出が必要になります。例えば階
段の位置や向きを変えるだけでも建築確認申
請が必要になります。必要なら提出すればい
いやん、と思われるかもしれませんね。
只、提出だけで済むのなら何の苦労も無いの
ですが、建築確認申請を提出するということ
は階段以外のあらゆる部分を現在の建築基準
法に従ってグレードアップしていかないとい
けません。それだけ皆さんの金銭的負担も増
えます。様々にハードルが上がることをお分
かりいただけますでしょうか?
2. 耐震性や断熱性も考える
リノベーションでは出来上がりの表面的な部
分が注目を浴び勝ちです。例えばキッチンが
新しいのになり嬉しい、とか、お風呂がユニ
ットバスに変わり便利になったとか、見た目
に分かりやすい部分の評価はしやすいのです
が、折角、大々的に建物を触るのなら耐震性
や断熱性についてもグレードを上げておくべ
きなんです。
耐震性なんて、「いつ地震が来るのかも分から
ないのに」とか「あと何年、この家に住むか
分からないのに」などとネガティブ発言を耳
にすることもあるのですが、やっておくこと
で精神的な安定に繋がりますし、ついでにす
ることで費用を抑えることが出来たり補助金
を使えることだって出来ます。
又断熱性を上げることで、ご自身の暮らしが
劇的に変わります「こんなに暖かくなるんだ
ったら、もっと早くやっておけば良かった」
と仰る方も多くいらっしゃいます。ご自身の
身体に優しくヒートショックの心配も減らせ
ることから、特に冷え性の方、アトピーや喘
息をお持ちの方やご年配の方には是非とも考
慮していただきたいと思います。
3. 事前の調査が重要
人間も健康診断を受けたり人間ドッグに入っ
たりしてメンテナンスをするように、建物も
あらゆる面から調査をしておくことで、その
建物が持つ問題点を把握しやすくなります。
先の耐震性や断熱性の問題を解決するにして
も調査が丁寧に行われることで、より的確な
補強や修繕を行いやすくなります。
4. 構造種別
建物は木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造な
ど様々な構造種別があります。日本の戸建て
住宅では殆どの建物が木造で出来ていますが、
木造は自由度も高く、何度も増改築を繰り返
しながら住み継がれていて、それが良い場合
もありますが、逆にそれが雨漏りの原因を生
んだり、構造的な欠陥を生んだり、欠点にな
る場合もあります。
又、集合住宅(マンションやアパートなど)
では鉄筋コンクリート造や鉄骨造が採用され
ることも多く、木造のような自由度はありま
せんので無茶な増改築はし難い建物と言えま
す。但し、一旦つくってしまうと、後から躯
体に穴を空けたりすることが難しいため特に
設備機器を更新する際に問題となるのがそれ
らの配管配線を、どのような方法で躯体を貫
通させるのかと言うことです。新築する場合
は、それらを見越して先に予備の穴をあけて
おくなどするのですが、リノベーションの場
合は特に躯体への配慮が必要になります。
5. 設備機器の更新
構造種別は置いておきリノベーションでは設
備機器の更新をされる方も多いと思います。
特にオール電化にするのか、ガスも併用にす
るのか、あるいは太陽光発電を導入するのか、
マニアックですが、オフグリッドと呼ぶ管や
線をつなぐことなく、電力や水を自力で調達
する方法もあります。
それらのメリット、デメリット、ご自身の生
活に照らし合わせて、どの方法が最もライフ
スタイルに適しているのか、を見直すのも、
この機会に見直してみるのも良いと思います。
6. 点検商法にはお気を付けください
最近は随分と減っているのかもしれませんが、
住宅系の工事で訪問営業でやってくるのは、
殆ど怪しんで良いと思います。困った場合は、
一人で判断せずに、誰かに相談する。それが
無理なら御家族が気を付けていただくと言っ
たオーソドックスな対処方法しかないと思い
ます。「身内に建築工事の関係者が居るから、
御社には頼めません。」と言った方便で切り
抜けることも考えてみて下さい。
7. WHOでは
WHO(世界保健機関)では住まいと健康に
関するガイドラインにおいて冬季の室内温度
は18℃以上が好ましいと勧告しています。
冬の室温が18℃以上であれば呼吸器系疾患
や心血管系疾患のリスクが低減できると確認
されたからです。また高齢者や子どもの場合
は、さらに暖かい環境が必要であることも述
べています。
詳しくは、こちら をご覧ください(PDFが開
きます)
8. 温熱測定
当事務所では新築で出来たお住まいや、リノ
ベーション前後のお住まいの温熱測定を実施
させていただいています。これは前述の「W
HOでは」にも関係しますが、実際に出来た
お住まいの室温を把握しておくことで、この
仕様であればこれくらいの室温を確保できる
と、皆さまに、お伝えできるようにすること、
とともにデータを分析し、今後の改善にも生
かすために蓄積させていただいています。そ
のためには、こちらの意向を汲んで適切に施
工していただける施工者さんのご協力も大事
になります。
9. 石場建ての建物
基礎の無い建物を、石場建て構法と呼ぶので
すが昨今、このような建物を購入して住んだ
り、用途変更して他の用途の建物として生か
したいと言う需要があります。但し、用途変
更する場合、床面積が200㎡以上になる場
合は用途変更のための書類手続きが必要とな
ります。手続きが必要になると言うことは当
然、耐震の面でも断熱の面でも現在の法を順
守する必要が生じる訳です。
出来るだけ現在の面影を変えずに手を加える
にしても、法順守のための根拠が必要になり
ます。それらの根拠を示すのは、全て何らか
の計算をする必要が生じます。石場建ての構
造安全性を検証するには限界耐力計算が向い
ていると言われています。しかし、この計算
を出来る人は未だ少ないのですが、私も時間
を見つけて取り組んでみようかと思いますが
現段階では未だ出来ていないのが現状です。
出来るようになった暁には又公表させていた
だきます。
10. 住宅医と言う選択肢
私も登録している住宅医と呼ぶ民間の制度が
あります。これは、ここまでに取り上げてき
たリノベーションにおける問題点を調査の上
に洗い出して、最善を尽くし改善しようと言
った取り組みをされている方々の集まりです。
詳しくは こちら をご覧ください。
と言う訳で20章に渡りお伝えしてきました
「リノベーションについて」シリーズも、こ
こまでで一旦、締めとさせていただきますが
又ウェブサイトにもリノベーションの専門ペ
ージを増やしたいと思いますので、ご期待下
さい。ありがとうございました。
次回からは通常のブログに戻りますので宜し
くお願いいたします。