兵庫、京都、大阪で誠実に丁寧に木の家をつくる芦田成人建築設計事務所

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西へ向けて

正午を少し過ぎ、鎌倉を出発し向かった先は
小田原です。今回一番の期待を寄せていたの
が小田原にある江之浦測候所と呼ぶ、デザイ
ナーの杉本博司さんが構想と基本設計、デザ
イン監修をされた施設です。

江之浦測候所へのアクセスは車で直接行くか
或いは電車の場合は最寄りの駅まで送迎バス
が来てくれるシステムになっています。送迎
バスの時間はおよそ30分に1本程度の頻度
であるのですが、基本的には何時の便に乗る
のかまで事前予約を入れておかないといけな
いので、遅刻は出来ないと思い、早めに鎌倉
を出発したのです。

最寄りの駅までは鎌倉から大船で1度乗り換
えて約40分で到着します。高台から海を見
下ろす絶景の無人駅に到着すると跨線橋を渡
り、改札へと向かいます。この跨線橋も、こ
じんまりしたサイズ感で後ろを振り返ると青
空に生える海を見下ろすことも出来ます。

改札に来るまでは無人駅であることは分かり
ませんでしたが、昔懐かしい木製のベンチと
木の駅舎、マリンカラーとも言える可愛い外
観も、これまた江之浦測候所への期待を増大
させてくれるものでした。

早めに到着したのでバスの時間までは、駅や
景色を楽しんだり、駅の周りを散策してみた
りと退屈することはありませんでしたが、そ
れでも尚且つ持て余す時間を惜しむように予
約の1本前の送迎バスが到着したので、「1
本早いですが、これに乗っても良いですか?」
と運転手さんに尋ねると「はい、どうぞ」と
のこと、この日は平日とあって、私を含め、
もう1組のカップルだけが、バスにのってい
るだけでガラガラで席にも余裕があったので
OKが出たのでしょうね。

と言う訳で1時30分に根府川駅を出発する
送迎バスに乗れたのでした。江之浦測候所の
ウェブサイトにはバス停から歩くと40分程
度は掛かると書かれていた通り、その道は曲
がりくねった峠道です。バスだとおよそ7~
8分で到着しましたが、歩くとその程度掛か
るのは頷けました。

バスが到着したのは駐車場で、既に数十台の
車が停まっており、賑わっている様子が推測
出来ました。施設のエントランスまでは薄暗
い森のような小径を通り抜け、森を抜けた所
で180°Uターンし石段を数段駆け上がりま
す。すると先ほどまでの海への視界が再び開
け、売店のような建物が迎え入れてくれます。

ここで獲れた柑橘類を絞りたてで提供する売
店なんだそうですが、この日はとても寒い日
で、とてもそんな身体を冷やすようなものを
欲する気分にはなれずスルー。

そしていよいよ受付のあるガラス張りの建物
へと到着するのでした。大きな荷物を抱えて
いたため下の階のロッカーを勧められ、まず
は身軽になりました。ガラス張りの建物を出
るといよいよ施設の中に進んで行くのでした。

一番最初は又ガラスに覆われた建物ですが、
その長さがとても長く100メートルもある
んだそうです。ここは夏至光遥拝100メー
トルギャラリーと名付けられた片面はガラス、
片面には写真が飾られたギャラリーで、その
名の通り、このギャラリーの向かう先には夏
至の日の出の時刻の太陽を拝むことが出来る
のだそうです。

一番先まで行くと一旦扉を開けてテラスに出
ることができ、快晴の相模湾を見下ろすこと
が出来ました。

そして、このギャラリーを出ると特別に順路
と言える道順は無く、そして建物もなく、殆
どが屋外の石段や坂道を行ったり来たりする、
アトラクションのようなハイキングのような、
敷地内各所に用意された茶室、神社、歴史の
ある石、オブジェなどを探しながら歩き、そ
の場所場所で見える海や山の景色を感じる、
およそ美術館とは程遠い体力と脚力を鍛える
アスレチック気分を味わえる施設でした。

現代アートが沢山あって、と言うイメージで
いたのですが、それとは程遠い感じでしたが、
いい意味での期待を裏切られた感じを持ちま
した。中でも一番興味深かったのは先ほどの
夏至光遥拝100メートルギャラリーの下を
潜る冬至光遥拝隧道と名付けられた錆び鉄を
箱型に加工して70メートルの長さで、先端
数十メートルを山から突き出したトンネルで
すが、このトンネルの先端からは冬至の日の
出が拝める方向に向けられているそうで、ト
ンネル状になっているため、その中を通れる
のは当然ですが、途中からその上にも載れる
ようになっていて、山から飛び出している部
分も、その上を歩けます。

山から飛び出していると言うことは何も支え
る物がない状態になっているため、その上を
歩くと微妙に揺れているのが分かり、ちょっ
とこわごわと歩を進めるのがやっとでした。

一応止め石と言って京都のお寺などに行くと、
これ以上先に進まないで下さいと言う意味の
石を縄で縛った物が置かれているのですが、
それと同じように止め石があり、それ以上先
には行ってはいけないことになっているので、
歩を進めることが出来るのはそこまででした。

敷地はかなりの高低差があるため調子よく下
まで降りて行ったは良いものの、午前中にも
歩き回り、敷地内を探索した後だけあって、
帰りは階段と登坂地獄で太ももが悲鳴をあげ
ているのが分かりましたが、帰りも又バスの
便があるため、時間に遅れまいとして必死に
半分ダッシュくらいの勢いで戻っていくので
した。

ダッシュのおかげもあり、帰りの最終便の1
本前の3時30分発の便に間に合い江之浦測
候所を後にしたのでした。そしてようやく丹
波への帰路へと就こうとしたのですが、何と
静岡は新幹線の便が不便なことか・・・。

駅は沢山あれど、特急に相当する、のぞみが
停まる駅がありません。小田原、熱海、三島、
どの駅も、のぞみは停まらず、あえなく帰り
は、ひかりで帰ることにしましたが、早く駅
に着いたので1本早い便に変更しようと思っ
ても、これまた便の数も少なく1時間ほど前
に三島駅に到着したにも関わらず、変更でき
ず当初の予約していた通りの便に乗るしかな
かったのです。そうは言っても、無事に帰っ
てこれたことは何よりで、帰ってきた翌日か
らは低気圧が長く居座り続けています。

これにて鎌倉と小田原の旅編は一旦、終了と
なりますが、又思い出した頃に旅の余韻に浸
ることがあるかもしれませんが、その際はど
うぞ宜しくお付き合いくださいませ。