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災害に備える住まいづくり その7

今週は、比較的暖かい日が続きそうですね。

さて、「災害に備える」シリーズも

7話まで来ました。

毎回シリーズ物にする場合は、10話完結位を

目途にしているので、あともう少しの所まで

きていますね。

「軒の出の無い建物」

さて、今回はサブタイトルの内容で話をします。

前回は台風に備えるために、高知では軒の出を短く造る

話をしましたが、それに関連して

では、全く軒の出の無い建物にしたら、どうなのか?

と言う話題を提供しました。

「軒は外壁を守る役割を担う」

では、どうして日本の住まいづくりでは元来

外壁よりも軒が伸びた家が造られてきたのでしょうか?

それは雨や風などから建物の外壁を守る役割が

大きいと思います。

全く軒の出の無い建物と外壁の汚れ具合を比較しても

その違いは明確です。

又、軒が出ていることで多少雨が降ったとしても

直ぐに窓を閉めなくても、雨が室内に入ることは無い

と言えます。

そして、日射しから室内を守る役割も果たします。

それほど、「軒の出」の役割は大きいと言えます。

「軒の出の無い家のデメリット」

それでも防水性能の向上からか、デザイン的に凹凸の少ない

いわゆる箱形の家は格好良いと、

若い方々を中心に人気が高いように思います。

しかし、いくら建材自体の防水性が高くなったとはいえ

その性能を生かすための「正しい施工」がなされていなければ

雨は漏ります。

ここで、あえて「正しい施工」と強調させていただいたのは

誤った施工も多い、からなんです。

防水シートの被せ代が短い、防水シートの立ち上がりが少ない

などは非常によくあるケースです。

しかし、これらは建物が完成してしまうと外壁の下に

隠れてしまい、雨漏りの原因を分かり難くしてしまいます。

「施工不良がもたらす結果」

このような施工不良であっても、

平時の雨では漏ることは無いかもしれませんが

いざ、台風などの緊急時は雨の降り方が変わり

上からだけで無く、風で巻き上げられて雨が下から

降ることだってあります。

そうなった時に、雨が漏ってしまうと

室内だけでなく、室内に置いていた家財や衣類なども

雨で濡れて台無しに、なんてことも考えられます。

ですので、軒の出の無い「建売」などを購入される場合は

よほど、気を付けて購入されるべきと思います。

気をつけろ、と言われても調べようもないので

出来れば軒の出がある建物の方が良いのでは無いでしょうか?

何故、「建売」と強調したのか?と言いますと

建売住宅は、工事の途中の様子が分からないからなんです。

表装だけを綺麗に繕うのは簡単ですので

やはり途中が分からないのは、不安もよぎりますし

出来てしまった建物を調べるのは、我々プロでも

相当、手間暇かかります。

かと言って、全ての建売業者が悪いと言う訳では無いのも

判断に悩む所ですね。

「まとめ」

結論として、軒の出の無い家を造る場合は

正しい施工による雨仕舞が考えられているか?

が非常に重要になります。

当方でも、軒の出の無い家を何棟か設計させて

頂いたことはありますが、その都度雨仕舞の

納まりは最新の注意を払います。

特に、近年では台風も大型化する傾向にあり

「下から吹き上げる雨」を意識する必要を

感じています。

皆様も今一度、軒の役割について

お考え頂く機会にして頂けましたら幸いです。

「次回は?」

さて、次回は、当シリーズの8話目となりますが

残す災害、「地震」について考えていきたいと思います。

お楽しみ下さいませ。